私の心が壊れるまで ―修羅部署の日常―

私は出向先の部署(=修羅部署)に3年ほど在籍することになります。
ここでもう一人の先輩(=しごでき先輩)と出会うことになります。

しごでき先輩は、私と同じ部署から出向しており、歴も長く、
修羅部署からの信頼も厚い方でした。
そして、いつも私のことを気にかけてくれていました。


修羅部署の忙しさ

出向して最初に感じたのは、仕事の量の多さと納期の短さでした。

納期は短く、仕事は次々と入ってきます。
一週間あれば長い方で、今日や明日ということも少なくありませんでした。

納期を守るためなら、昼休憩が返上になることは日常茶飯事です。

打合せ先から資料の修正が入れば、「30分」と言われることもあります。
ただ、その30分というのは、修正して終わりではありません。
担当者が確認し、問題ないと判断するところまでを含めた時間です。

実際に作業できる時間は20分ほどでした。
指示通りに直っているかを自分で確認する時間すらありませんでした。
言葉にするなら「一発勝負」です。

直っていて当たり前、間違っていれば責められます。
会議が終わるまで、生きた心地はしませんでした。

一つ終わっても、すぐ次の仕事。
落ち着いて仕事をするというより、常に納期に追われていて、
一息つけることはほとんどありませんでした。

私が修羅部署に来て数日後、歓迎会を開いてくれました。
突発的に決まったわけではなく、事前に日程調整もされていました。

部署はいくつかのチームに分かれていますが、
私の所属していたチームからの参加者は私一人でした。
来てもらえなかったことを言いたいわけではありません。

それくらい、仕事に追われている部署でした。

そして、この部署で作成する資料はとても重要で、すべての土台となるものでした。
間違いは許されませんでした。
その一方で、資料のための情報が十分にあるわけではありませんでした。
これまでの経験や知識がものをいう仕事でした。

そんな環境の中で、来たばかりの私にもしごでき先輩と同じことが求められました。

特に修羅部署の責任者(=軍曹)からは、
「なんでわからないんだ」
「お前の考え方は間違っている」
そういった言葉は日常茶飯事でした。

軍曹は絶対的な存在で、誰も逆らえない空気がありました。

軍曹の声は、少し離れたこちらの席にもはっきり聞こえてくることがありました。
怒鳴っているというほどではありませんが、強い口調で話すことが多かったです。

フロアの雰囲気も独特でした。
軍曹が誰かに強い口調で話していても、職場が静まり返ることはありません。

ただ、軍曹のチームの人たちは一瞬だけ軍曹の方を見ます。
そんな光景を何度も見ました。

でも、それが日常でした。


残業時間

残業時間は月平均で50時間ほどでした。
数字だけ見れば特別多いわけではありません。

ただ、深夜残業になることもしばしばありました。

出向前に所属していた部署(=元部署)では、深夜残業は事前に上長(=押付部長)へ申請し、認められれば可能というルールでした。
とはいっても、申請は通らないことが多く、基本的にはできないものとされていました。

しかし、修羅部署では関係ありませんでした。

今日中の仕事を受けたときには、すでに押付部長は退社しており、申請ができません。
次の日に事後申請となりますが、何も言われることなく通ります。

この状況でも、深夜残業を控えるような調整がされることはなく、
常習化していました。


仕事納め

年末の仕事納めの日のことも覚えています。

仕事納めの日も、特別な雰囲気はありませんでした。

元部署では、朝から掃除をして、午後は挨拶回りを行い、定時になれば全員が帰る。
それが当たり前でした。

しかし、修羅部署には仕事納めという空気はありませんでした。

いつも通り納期に追われる上に、
「今年中に片づけたい」と仕事が次々に入ってきます。

定時になっても終わる気配はなく、仕事が終わったのは21時を過ぎていました。
それでもフロアにはまだ多くの人が残っていました。

周りも普段と変わらず仕事をしています。
「今日は早く帰ろう」というような空気はありません。

普段と同じように仕事をして、普段と同じように一日が終わる。

そんな仕事納めは毎年のことです。

今年の仕事が終わったことを報告しようと、元部署に寄りますが、
フロアは真っ暗で、もちろん誰もいません。

押付部長が修羅部署に様子を見に来ることもありませんでした。


有給休暇

有給休暇も、取りやすい雰囲気ではありませんでした。
取れないわけではありませんが、簡単に「休みます」と言える空気ではありません。

まずしごでき先輩に相談し、軍曹チームに伝え、最後に軍曹に話します。

返ってくる言葉は決まっていました。

「勝手に休めばいいが、休む穴埋めはできるんだろうな?」

修羅部署の仕事は専門性が高く、誰でもできるものではありません。
結局、しごでき先輩に負担がいくことになります。

しごでき先輩もバックアップ体制を押付部長にお願いしていましたが、
「代わりがいないからできない」
それがいつもお決まりの答えでした。

体調不良でも関係ありませんでした。

熱があり、頭もぼーっとしていて、とても仕事にならない状態でした。
納期もあるため極限まで耐えましたが、我慢も限界になり、

「体調が悪いので午後から休暇を取らせてください」

と申し出ても、返ってくるのは「救急箱に薬あるから」でした。

結局休むことはできず、薬を飲んで働きました。

体調不良ごときで休むなと言わんばかりの雰囲気がありました。

朝起きて体調が悪いときも、「休む」という選択肢はありませんでした。
薬を飲んで会社に行きます。

休むこと自体が悪いわけではないのに、
いつしか休むことにさえ罪悪感を覚えるようになっていました。